2012年春季 フジテレビ 午間劇
平成24年夏。和也(綾部守人)とはる菜(二宮星)は上野駅を目指し、大勢の人ごみの中を歩いていた。小心者だが妹には強気な兄と、それでも兄にくっついて離れない妹。二人の両親に離婚問題が浮上し、夏休みの間、茨城県にある母の実家に兄妹で預けられることになったのだった。
「死ね!死ね!」電車に乗り、攜帯電話でゲームを始める和也。するとある老婆が註意する。そんな言葉使うんじゃない、と。戦時中、ここから汽車で兵隊に行った男たちはほとんどが死んだのだと言う。「戦爭は恐ろしい…」老婆の目がギョロリと和也を睨みつける。
その老婆から逃げるように、途中下車した和也とはる菜。すると、駅のホームで次の電車を待つ二人の前に、轟音とともにSLが現れる。と同時に和也が手にしていた攜帯電話の表示が『圏外』へと変わる…。
SLから降りた和也とはる菜の前に広がっていたのは、昭和19年の町並みだった。和也は自分がどこにいるのかが完全に理解できていないが、理解もしたくはない。その瞳は恐怖に包まれる。
「日本は負ける、みんな死ぬぞーっ」上條旅館の息子・耕作(崎本大海)は、鍵をかけられた薄暗い部屋で壹人叫んでいた。父・大五郎(升毅)は戦地から帰還した耕作のその言動のせいで上條家が非國民扱いとなったことに苛立つ。女將のマツ(うつみ宮土理)や若女將の佐代(高岡早紀)がたしなめるが、そこへ洗濯物と食料が盜まれたと知らせが入る。
廃墟の小屋に身を隠し、畑でとって來た野菜で飢えをしのぐ和也とはる菜。ある夜、和也は攜帯電話の電源を入れ、はる菜に畫面を見せる。そこには旅行や家の中での母親との寫真が映し出されていた。ママに會いたい…と泣き出すはる菜。和也は日本が戦爭に負けたら、きっと戻れるからと勵ますのだが…。